療法食とは何か
療法食は、猫の特定疾患を管理するために設計された特別なフードです。病気の進行を遅らせ、症状を軽減し、獣医師の管理下で生活の質を改善することを目的とします。
⚠️ 重要な注意: 療法食は必ず獣医師の指導のもとで使用してください。自己判断で診断したり、勝手に食事を切り替えたりしないでください。
猫で使われる療法食の種類
1. 腎臓用療法食
慢性腎臓病は高齢猫で非常に多い問題です。IRISの考え方では、一般にステージ2以降で腎臓用食が検討されます。
腎臓用食の特徴:
- 低リン: 腎負荷を下げ、進行抑制に役立つ
- 管理された蛋白質: 消化性の高い良質蛋白を用いる
- オメガ3脂肪酸: EPAとDHAが腎機能の支援に関与する可能性
- 抗酸化成分: 酸化ストレスの軽減を助ける
腎臓用食を使った猫で生存期間延長を示す報告があります。
2. 肝臓用療法食
肝リピドーシス、胆管肝炎、その他の肝疾患では栄養管理が重要です。肝臓用食では、高品質蛋白、適切なエネルギー密度、肝サポート栄養素が重視されます。
- 高品質蛋白: 卵や乳蛋白が選ばれることが多い
- 中等度脂肪: 食欲低下時でも効率よくエネルギーを供給できる
- 亜鉛とビタミンB群: 肝再生を支える可能性がある
- L-カルニチン: 脂質代謝の調整を助ける
3. 尿路用療法食
猫の下部尿路疾患はよく見られます。尿路用食は、ストルバイトやシュウ酸カルシウム関連問題の予防と管理に使われます。
尿路用食の目標:
- 尿pHの管理: ストルバイト寄りなら酸性化、シュウ酸カルシウム寄りならより中性寄りに調整
- 低マグネシウム: ストルバイト形成圧を下げる
- 高水分: ウェットフードで尿濃縮を下げる
- 管理された蛋白質: 臨床目標に合わせて設計する
💡 ヒント: 尿路トラブルのある猫では、ウェットフードが水分摂取を増やし、尿濃度低下に役立つことがあります。
4. 消化器用療法食
慢性下痢、嘔吐、炎症性腸疾患などで使用される療法食です。高消化性と食事負担の軽減が中心になります。
- 高消化性蛋白: 吸収しやすい蛋白源を選ぶ
- 必要時の低脂肪: 脂肪不耐の症例で重要
- プレバイオティクス: FOSやMOSが腸内環境を支える可能性
- 可溶性繊維: 腸の動きを整えやすい
5. 低アレルゲン食
食物アレルギーや不耐症では、加水分解蛋白食や新奇蛋白食が使われます。除去食試験は通常8〜12週間の厳格な管理が必要です。
- 加水分解蛋白: 分子量を小さくして免疫認識の可能性を下げる
- 新奇蛋白: 過去の暴露が少ない蛋白源を使う
- 限定原材料設計: 変数を少なくする
6. 体重管理用療法食
肥満は糖尿病、関節疾患、肝障害のリスクを高めます。体重管理食は、カロリー制限と除脂肪体重の維持を両立する設計が基本です。
- 高蛋白: 筋肉量維持を助ける
- 低脂肪: エネルギー密度を下げる
- 高繊維: 満腹感を保ちやすい
- L-カルニチン: 脂肪利用を支える可能性
療法食使用時の注意点
- 獣医師管理: 療法食は必ず臨床計画の中で使う
- 定期評価: 検査値と臨床反応を継続確認する
- 移行期間: 7〜10日かけて段階的に切り替える
- 単一食管理: 治療期間中はおやつや人の食べ物を避ける
- 水分摂取: とくに腎臓・尿路症例で重要
VetKriterでの療法食評価
VetKriterでは、WSAVA、AAFCO、FEDIAF、IRISなどの国際基準を参考に療法食を評価します。各カテゴリごとに疾患別の期待条件を設定しています。
参考文献
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- Case LP, et al. Canine and feline nutrition. 2011.
- Center SA. Feline hepatic lipidosis. 2005.
- Elliott J, et al. Dietary management and survival in feline chronic renal failure. 2000.
- Guilford WG, Matz ME. Nutritional management of GI disorders. 2003.
- Polzin DJ. Chronic kidney disease in small animals. 2011.
- Verlinden A, et al. Food allergy in dogs and cats. 2006.
- Westropp JL, Buffington CT. Feline idiopathic cystitis and management. 2004.